地震ハザードステーション(J-SHIS)の紹介

地震ハザードステーション(J-SHIS)は「全国地震動予測地図」の成果を視覚的に見やすく提供するサイトとなっています。「全国地震動予測地図」とは以下のように説明がされています。

『「全国地震動予測地図」は、将来日本で発生する恐れのある地震による強い揺れを予測し、予測結果を地図として表したものです。国の地震調査研究推進本部により作成されています。「全国地震動予測地図」は、地震発生の長期的な確率評価と強震動の評価を組み合わせた「確率論的地震動予測地図」と、特定の地震に対して、ある想定されたシナリオに対する強震動評価に基づく「震源断層を特定した地震動予測地図」の2種類の性質の異なる地図から構成されています。』

例として挙げるならば「確率論的地震動予測地図」は、想定しうるすべての震源を調査したうえで今後〇年間に震度〇以上の揺れに見舞われる確率の分布を示すマップ、「震源断層を特定した地震動予測地図」は、特定の震源で地震が発生した際の震度の分布を示すマップ、のことです。このように書くと地図の精度が高そうに思えるかもしれませんが実際のところ、地震の発生についてはよく分かっていないことも多くあるため、精度はとても高いとはいえず予測の数値のばらつきは極めて大きいことに留意すべきです。ですので、確率が低いところがかならずしも安全とはとてもいえません。

J-SHIS Mapのトップページにはデフォルトで「確率論的地震動予測地図」の今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布が示されています。私がおすすめしたいのは、これを地図のすぐ上にあるプルダウンメニューを使って「30年 震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図」から「30年 震度6強以上の揺れに見舞われる確率の分布図」に変更することです。この方が6弱以上の分布よりもメリハリの利いた分布図となり、地域の違いを認識しやすくなるからです。また、震度6強以上になると古い家屋が全壊する可能性が高くなりますので、被害の点からも震度6強以上を着目することは重要です。

図 J-SHIS Mapによる「30年 震度6強以上の揺れに見舞われる確率の分布図」

震度6強以上の揺れに見舞われる確率のランクが最も高いランク(30年間26%以上)の地域は、何かしら高くなる理由があります。最も高いランクのところは、南海トラフ巨大地震、南関東地域の直下地震、千島海溝沿いの巨大地震等の地震発生確率が高い地震の震源域に極めて近い、震源域に近くてかつ表層地盤が揺れやすいといった地域が相当しています。ちなみに30年間26%以上というのは、100年間に少なくとも1回はその揺れ以上の地震を経験することに相当します。

地震ハザードステーションのマップを使えば、全国を俯瞰して震度6強以上の揺れに見舞われる確率が高い地域はどこなのかを知ることができます。また地図上で特定の場所の予測値を知りたい時はその場所の位置でダブルクリックしてみてください。左側にその場所での数値の一覧が表示されるはずです。その中に震度6強以上となる確率の値もあります。複数の地点でクリックしてみてください。震度6強以上となる確率の値が高いところが相対的に揺れのハザードが大きい場所を意味します。

一方で地図を拡大して狭い範囲でリスクの違いを見たい場合に、どこも同じ色のランクで違いが分かりにくいといったケースもあるかもしれません。その場合は表層地盤の違いに着目します。狭い範囲では表層地盤の違いがハザードの違いに直結しているからです。地図の上にあるタブのうち、右から3番目の表層地盤のタブを押してみてください。そうすると表層地盤の地盤増幅率の分布が表示されます。増幅率の値が大きいところが揺れやすい場所となります。地図上でクリックすれば地盤増幅率の数値も表示されます。確率論的地震動予測地図のタブに戻して、同じ場所をクリックしてみてください。周辺よりも確率値は高く表示されるはずです。下図には浜松市周辺の事例を表示しました。

図 浜松市周辺の今後30年間に震度6強以上の揺れに見舞われる確率の分布図(J-SHIS Mapより抜粋)
~1つのランクでしか表示されない~

図 浜松市周辺の表層地盤の地盤増幅率の分布図(J-SHIS Mapより抜粋
~複数のランクで表示される~

「震源断層を特定した地震動予測地図」としては主要活断層の震度分布をみることができます。見方としては、地図の上にある想定地震地図のタブをクリックします。Map画面の左側に震源断層の枠がありますので、主要活断層の右側に赤枠のチェックボックスにチェックを入れます。すると主要活断層の投影図が表示されるので、震度分布を見たい活断層を選んでその断層のところでダブルクリックします。そうすると震度分布が表示され、地震発生確率に関する情報も表示されるはずです。また、断層によっては断層割れ方の違いによって複数ケースの震度分布が想定されています。地図の右上に「ケース1」と表示されているプルダウンメニューがありますのでクリックしてみてください。ケース2,ケース3・・というように各ケースの震度分布が表示されますので、揺れ方の違いもチェックすることができます。震度分布が表示している画面で少し拡大して、任意の地点をクリックするとその地点の地震動に関する情報が表示されます。

図 J-SHIS Mapで深谷断層の震度分布を表示させた画面(ケース1~11の震度分布がある)

地震発生確率に関する情報も表示されると書きましたが、地震発生確率に関する情報はそのほとんどが信頼度が低い数値ですので気にする必要はないと思います。はっきりいって活断層の活動履歴なんてよくわからないといってよいです。しかも発生間隔は数千年以上がほとんどで人生80年とすれば、活断層の営みのごくごくわずかの期間で30年、50年単位で発生確率を出すこと自体無理があると思うのです(あくまで、吾作の個人的な見解です)。個人的なレベルでは近くの活断層が活動して被害を受けるのは重大な交通事故に遭うようなものと同等だと思います。全国を見渡せば、一定の割合の人たちが重大な交通事故に遭遇しますが、個人としては遭遇する確率は低いといえます。活断層も同じで人生80年の間において全国では4~5回程度主要活断層が動くかもしれませんが、それが自分の住む近くで発生する確率はかなり小さいといえます。ただし、活断層のリスクを受け入れるとしても、近くの活断層がどの辺にあるかということは情報として頭にいれておくべきことだと思います。

一方で活断層のリスクを避けたいというのであれば、知られている活断層から少しでも離れたところでできれば地盤の良いところに住むべきですが、生活の利便性と比較の上で検討すべきだと思います。重大な交通事故に遭う確率が高くなるからといって、車の運転をしない人はほとんどいないことと同じです。地震ハザードステーション(J-SHIS)の紹介としながら、最後に余計なことを書きました。

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