1991年~2020年の30年間の年別の平均気温の平均値のところで、観測点別に1991年~2020年の気温上昇率を1次の回帰式の傾きの大きさを算定したところ、観測点によって気温上昇率が大きくばらつく結果が得られました。この理由を考察するため、大阪と神戸を例にして1991年~2020年の年別の平均気温の推移を調査しました。なぜ、大阪と神戸を取り上げたかというと、直線距離で30km程度しか離れていないのに、1991年~2020年の気温上昇率が大阪が0.0119℃/年に対し、神戸が0.0456℃/年と4倍近く神戸による上昇率が高かったためです。
そこで、大阪と神戸の1991年~2020年の年別の平均気温の推移と気温の回帰式を示したグラフの結果を冒頭の図に示しました。また、大阪と神戸の年別の平均気温の平均値の値と大阪及び神戸の平均気温の気温差の一覧を下表に示します。
表 大阪と神戸の1991年~2020年の年別の平均気温の平均値と大阪及び神戸の平均気温の気温差の一覧
年 | 大阪(℃) | 神戸(℃) | 差(℃) | 年 | 大阪(℃) | 神戸(℃) | 差(℃) | 年 | 大阪(℃) | 神戸(℃) | 差(℃) |
1991 | 17.21 | 16.41 | 0.80 | 2001 | 17.16 | 16.98 | 0.18 | 2011 | 16.90 | 16.87 | 0.03 |
1992 | 16.90 | 16.05 | 0.85 | 2002 | 17.36 | 17.21 | 0.15 | 2012 | 16.63 | 16.67 | -0.04 |
1993 | 16.33 | 15.55 | 0.78 | 2003 | 16.90 | 16.81 | 0.09 | 2013 | 17.15 | 17.10 | 0.05 |
1994 | 17.80 | 17.01 | 0.79 | 2004 | 17.91 | 17.80 | 0.11 | 2014 | 16.74 | 16.79 | -0.05 |
1995 | 16.64 | 15.73 | 0.91 | 2005 | 17.03 | 16.85 | 0.18 | 2015 | 17.28 | 17.33 | -0.05 |
1996 | 16.38 | 15.64 | 0.74 | 2006 | 17.08 | 17.00 | 0.08 | 2016 | 17.74 | 17.84 | -0.10 |
1997 | 16.84 | 16.21 | 0.63 | 2007 | 17.59 | 17.48 | 0.11 | 2017 | 16.86 | 16.86 | 0.00 |
1998 | 17.90 | 17.33 | 0.57 | 2008 | 17.03 | 17.03 | 0.00 | 2018 | 17.50 | 17.43 | 0.07 |
1999 | 17.37 | 16.85 | 0.52 | 2009 | 17.09 | 17.17 | -0.08 | 2019 | 17.62 | 17.69 | -0.07 |
2000 | 17.27 | 17.07 | 0.20 | 2010 | 17.31 | 17.26 | 0.05 | 2020 | 17.68 | 17.65 | 0.03 |
この結果から大阪と神戸を比較すると年別の推移の傾向は一致するものの、両地点の気温差(大阪-神戸)は1991年~1999年は0.52℃~0.91℃、2000年~2007年は0.08℃~0.20℃、2008年~2020年は-0.10℃~0.07℃と年代によって大きく異なります。そこで、地域気象観測所一覧に記載されている観測開始年月日を調べてみることにしました。大阪が平成11年2月24日、神戸が平成19年3月28日とあるので、両地点の気温差が変化する年代と概ね一致します。したがって、大阪の気温上昇率が低めの数値、神戸の気温上昇率が高めの数値になっている要因は観測点の移設による影響が大きいことが推定されました。同じ市内でも観測点の移設によって、温度差がけっこう出てしまうことがあるのですね。気象庁が平年値の算定において、観測点の移設の影響を補正することの重要性が分かる一例でした。
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