30年間における気象台観測点の最大の土壌雨量係数と大雨警報・注意報基準超過日数

 管区気象台、地方気象台56観測点の1991年1月1日から2020年12月31日までの時刻別(毎正時)の1時間降水量データを利用して、30年間における56観測点の時刻別の土壌雨量係数を算定し、その中から最大となる土壌雨量係数を算出しました。さらに30年間に現状の大雨注意報・警報(土砂災害)の基準を超過した日数(1日のうち、1回でも超過した日数)をカウントしてみました。 土壌雨量指数は降った雨が土壌中に水分量としてどれだけ溜まっているかを数値化したもので、現在は土砂災害を対象とした大雨注意報・警報の発表基準は土壌雨量指数の値となっており、原則市町村ごとに設定されています 。(なお、浸水害は表面雨量指数という別の指標になります。)土壌雨量指数の特徴としては、直前に降った雨だけでなく、数日前に降った雨による影響も土壌に残っていれば受けるということです。 ですので、直前に大量の雨が降ってなくても長時間一定以上の雨が降り続ければ、 土壌雨量指数の値は大きくなります。算定した結果は下表のとおりです。

表 30年間における気象台観測点の最大の土壌雨量指数の値と大雨注意報・警報基準超過日数

地点名最大年月日/時刻最大土壌
雨量指数
注意報
基準値
警報
基準値
注意報基準
超過日数
警報基準
超過日数
札幌  19980916/18h116.377131310
函館  19950828/07h122.6621061303
旭川  20160820/21h135.491145150
室蘭  20100812/06h131.7691371200
釧路  20130916/20h136.678135561
網走  20160821/12h147.174133303
稚内  20160906/14h147.165888318
青森  20130916/15h141.983113295
盛岡  20020711/09h154.3619120929
仙台  20191013/01h268.18010110345
秋田  20180518/18h141.7638726747
山形  20200728/16h142.3861043713
福島  20191012/24h178.97210514022
水戸  20160823/20h168.189130609
宇都宮20191012/23h215.3101139489
前橋  19990814/23h183.27012017916
熊谷  20171023/04h203.4921288020
銚子  19950917/13h199.88712311427
東京  20041009/18h216.0127180303
横浜  20141006/11h222.16310946266
新潟  19980804/08h199.889119558
富山  20180901/07h161.88310017561
金沢  20131120/16h148.68510218171
福井  20060718/24h181.16710550643
甲府  20000912/08h194.7871116122
長野  20060719/06h117.164738243
岐阜  19970728/19h173.7941411147
静岡  20030704/03h252.99414723231
名古屋20000912/04h278.5921307420
津    20040929/14h319.51051556214
彦根  20171023/01h169.6821099526
京都  19990630/02h191.29112110327
大阪  20041020/19h162.111420
神戸  20180706/15h202.3881238715
奈良  20171022/24h173.4861087319
和歌山20180706/05h236.31051505312
鳥取  20180707/09h164.5901126732
松江  19970712/08h182.199151524
岡山  20180707/01h179.7821028328
広島  20180707/05h224.19011513045
下関  20180706/08h200.51071346828
徳島  20110920/24h300.91241556725
高松  20041020/16h190.7881237616
松山  20180707/07h195.28612511420
高知  19980925/01h442.9184243307
福岡  20180706/16h221.810014411716
佐賀  20190828/06h306.693109212120
長崎  20110612/13h219.18913721338
熊本  19970710/16h270.311216614528
大分  19930903/22h256.29314917922
宮崎  19930801/17h281.910516526936
鹿児島20190703/22h275.810815022948
那覇  19990922/23h307.810915615737
宮古島20170913/22h258.51201508129
石垣島20101023/04h293.584121336112
南大東19960920/20h217.9
                  *「ー」は地形の関係で基準値が定められていないことを示す。
                      *基準値は観測点がある当該市町村の基準で設定した。

 土壌雨量指数の値は全国で同じ係数を使って算定しておりますので、実際の地中の水分量の値とは平均的な地盤との相違により、地点によってはかなり誤差があると思われますのでその点はご留意願います。

 30年間の最大土壌雨量指数が最も大きな値は高知の442.9、逆に最も小さい値は長野の117.1でした。実に4倍近い差があります。ただし、30年間の基準値の超過日数は 高知が注意報30日、警報7日、長野が注意報82日、警報43日と長野の方が圧倒的に多くなります。土砂災害の危険度としては土壌雨量指数だけでなく、注意報・警報の基準値とセットでみる必要があるかと思います。つまり、土壌雨量指数が全国一律の係数の値で算定している代わりに 注意報・警報の基準値の大きさで地域性を評価していることになっています。 また、大雨警報(レベル3)の上の基準として、土砂災害警戒情報(レベル4)がありますが、これは直前の1時間積算雨量と土壌雨量指数の複合基準となっており、直前の1時間積算雨量が多ければ 土壌雨量指数の基準値は小さめ、逆に少ない、0の場合は土壌雨量指数の基準値は大きめとなります。複合基準ということで全国の基準値は公開されていないようですが、例えば静岡県地理情報システムでは県内の各メッシュの土砂災害警戒情報の基準値のグラフ( 1時間積算雨量と土壌雨量指数の関係)を確認することができます 。

 2021年7月3日に発生した熱海市の伊豆山地区の土石流が発生した時刻は周辺の熱海市網代の観測点データを利用して解析した結果、発生原因と推測されている盛土が造成後の10年間あまりの期間の中では土壌雨量指数が最も大きい値を示していました(ここを参照)。

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